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現実でもいつも通りというのは無理だった。
死の恐怖というのはどうもうまく拭うのが難しいらしい。
目を覚ましたくない・・・。
だが意識は完全に覚醒している。
実に残念なことに、だ。
『起きろ、岬!
目が覚めていることぐらい知ってるんだぜ!!』
トウカの声が俺を無理やりにでも現実に引きずり上げる。
俺の中に怒りの感情をガツンとぶつけてくる。
びっくりして俺は目を開けて勢いよく体を起こす。
目の前には影が出来るほど近いトウカの顔がある。
冗談で済ますならキスでもするんだが、そんな感じでもない。
今にも首筋に喰らいつきそうな形相で睨んでくる。
「・・・俺は・・・どうなったんだ・・・?」
恐怖を押さえこみながらトウカに聞く。
『お前は負けた。
自分独りで突っ走りやがって!!』
そうか・・・。
ハナさんが向かいの席に座り、話し始める。
「私たちが助けに行った時には岬しかいなかったの・・・。
あのイマジン・・・仮面ライダーは岬を殺そうとしていたんでしょう?
何で殺さなかったのかしら・・・?
・・・今はそんなことは別にいいわね。
岬が生きているんだもの・・・。」
トウカは舌打ちをして、俺から離れる。
そして、他の席に置いてあった氷の入った袋を頭に当てる。
「トウカ・・・どうしたんだ?」
恐る恐るトウカに聞く。
『テメェのせいだ・・・。』
トウカは静かに俺を睨む。
『テメェがアタイを追いだしたんだ・・・!!』
追い・・・出した?
何が何だか?
『君の中の闇に当てられたんだよ・・・。
なにせ、僕たちまで気持悪くなったぐらいだからね。
あそこまで耐えたトウカちゃんは称賛に値するよ。』
マイがそう言う。
「そうか・・・。」
現実を見たくない・・・。
その思いが視線を下げる。
『ごめんなさいは・・・?』
トウカが俺に言う。
『ごめんなさいは!?』
トウカの声が響く。
俺は立ち上がり、拳を握りしめる。
「ごめん・・・トウカ・・・みんな・・・ごめんなさい・・・!!」
涙が頬を伝う。
俺には力が足りない・・・。
それが悲しかった。
トウカ達に言葉の刃を向けた・・・。
その刃は今、俺自身の心に突き刺さっている。
「ごめん・・・。」
痛みが全身に広がっていく。
心の痛みか、それとも戦いによるものか・・・。
今はどうでもいい。
俺の中に苦しみがあることが罪悪感を沈めてくれる。
それだけでいい・・・。
悪いことだと分かっていてもそれでも今は・・・。
『トウカちゃんじゃ駄目だった。』
マイが悲しい現実を口にする。
『何だと!!
次に奴に会った時には!!』
トウカがマイの胸倉をつかむ。
『次・・・本当に勝てるのかい?
また姿を消されて倒されるんじゃないのかい?』
『くっ・・・!!』
トウカはマイから離れる。
『今、対抗できるのはおそらく・・・。』
マイは俺の方を見る。
「ブチギレた俺・・・。」
マイが首をゆっくりと下に動かす。
『しかも、感覚だけでは駄目だ。
僕たちイマジンの力がないと対抗できない。』
「でも、トウカ達は長時間岬の体に入っていられない・・・。」
ハナさんの顔が曇る・・・。
『僕がやる・・・!!』
端の席で丸まっていたヤクモがそう言う。
『あのイマジンは・・・多分、僕のお姉ちゃんを・・・!!』
怒りに歪んだその顔は初めて出会った時よりも恐怖を感じる。
「・・・分かった」
『岬!!』
トウカが俺の言葉に驚く。
『何でこのガキに任せるんだよ!
アタイでも岬の中に10分もいられなかったんだ!!
このガキじゃ全然・・・』
『いいや・・・。』
トウカの言葉をマイが遮る。
『今のヤクモなら大丈夫かもしれない・・・。』
『何でだよ!?』
『岬がキレた時、トウカの意識だと反発したんだ。
ヤクモも、僕も、岬の意識を感じて震えが止まらなかった・・・。
だけど・・・、岬が敵に倒されそうになった時に、彼の震えが止まった。』
俺もトウカもマイの次の言葉を求め、じっとマイの瞳を見つめる。
「怒り・・・の力、でしょうねぇ・・・?」
だが、俺たちの求めた答えは別の人が応えた。
いつの間にか背中に気配が現れていた。
オーナーは俺とトウカの間を通り、端の席へと座る。
「ナオミくん、チャーハンを。」
「は~い!」
気が抜けて俺は椅子に座る。
「岬君の意識に反発したのは“いつもの”トウカくんでした。
しかし、強い闇に同調できる、あるいはそれより強い感情があれば耐えうる可能性があります・・・。
もっとも、それが岬君の求めるヒーローらしい戦い方になるかどうかは疑問が残りますが・・・。」
怒りに任せての戦闘はきっと惨いものになる。
攻めだけで守りが無い。
攻撃力はあっても慈悲は無い。
「今日は俺の体が持たないだろうし、奴との戦いは明日になるだろうな・・・。」
俺の言葉に合わせるように、ゆっくりとデンライナーの速度が落ちる。
「トウカ、俺たちに何かあった時は頼む。」
トウカに背を向けて立つ。
まるで、自分達の立ち位置が仲間ではなく敵同士かのように・・・。
『あぁ・・・。
いざとなったらテメェをブン殴ってでもな・・・。』
その言葉は、俺たちの場所を分けてしまった。
「明日・・・か。」
 
昨日と同じ場所、同じ時刻。
敵は鏡の中にいる。
「変身・・・。」
銀色のレール。
俺の中にヤクモの力が流れ込んでくる。
俺は、トウカ達を信じて、心を黒く染める。
悲しみすら邪魔だ。
今は壊すことが全てだ・・・。
黒く・・・黒く・・・。
世界が冷たくなってくる。
感覚が広がっていく・・・。
ヒュゥン・・・・・・
鏡の中から鞭が伸びる。
その鞭を左手で掴み、宙へ。
鞭に引っ張られて敵が現れる。
イマジン。
「その姿で戦うというのか!?
ナメんじゃねぇ、この野郎!!」
銃撃。
銃口から出た光はイマジンに当たらない。
敵を誘っている。
イマジンは鞭を離し、デッキを取り出す。
『変身』
地に足を着ける。
目の前に緑のライダーがいる。
空気がビリビリと震えている。
超える・・・今度こそ・・・“僕”は!!
デンガッシャーを組み替える。
左手にショートソード、右手にハンドガンを持つ。
目を瞑る。
攻撃が来る。
音で弾けるのが分かる。
目を開ける。
背中にダメージを喰らう。
だがそれはイメージでしかない。
足の裏に衝撃。
宙に浮くベルデ。
そこで初めてベルデの攻撃を上半身を倒して避け、その勢いでベルデを蹴りあげたのだと分かる。
体勢を立て直しショートソードで斬りつける。
“アドベント”
左腕にモンスターの舌が巻きつく。
地面に叩きつけられる。
“クリアベント“
意識を広げる。
“ソードベント”
ガキィィィィィィィ・・・・・・
剣撃をショートソードで受ける。
衝撃を右腕に受け、それがモンスターの居場所を知らせる。
見えない剣を受けつ、右腕を振る。
ガン・・・ガン・・・ガン・・・バシュゥゥゥ!!
焦げる臭い。
真っ黒な心が何かを叫んでいる。
ベルデも何か言っているようだが俺には聞く余裕がない。
否、内容を理解するような気持ちにすらなれない。
俺は攻撃を受け止め、敵を倒すだけだ。
『・・・・・・・・・!!』
ベルデの一言に反応する。
体を反転させ、銃口をベルデに向ける。
自分に隙が生まれたのが分かった。
“ファイナルベント”
その音に反応する。
モンスターが姿を現し、その口からベルデの足に赤い線が延びる。
迫りくるベルデ。
再び体を反転させる。
ベルデに向けて左手を振りおろす。
モンスターの右肩から煙が出ている。
バシュゥゥゥ!!
正確にモンスターの肩を撃つ。
ベルデに掴まれる。
軌道が違う。
浮遊感。
ベルデと共に地面に落ちる。
衝撃。
ハンドガンをベルデの額に当てる。
破裂音。
砂。
衝撃。
実体を失うイマジン。
敵・・・。
殺す・・・殺す・・・コロス・・・コロス・・・殺すコロス殺すコロス殺すコロス殺す・・・・・・・・!!
振りおろす左手。
金属のぶつかる音。
銀色の刃。
その先に金色の顔。
「最初に言っておく!!
俺はこれまでの電王のやり方が好きだった!!」
男の声。
「侑斗も口では言わないが心ではそう思っている!」
目の前にいるのはゼロノス。
「何でこんな事をするんだ!!
イマジンを救うつもりじゃなかったのか!?
やはりイマジンを全て殺すつもりか!?」
「――――――!!」
目の前の存在に対する否定の言葉。
言葉の理解すら自分で出来ない。
銃を突きつける。
重い感覚。
トウカの感覚。
「黒いの!
コイツを倒せ!!
ただし、殺すな!!」
トウカが消える。
「分かった!!」
右手が一瞬重くなる。
ショートソードが押し返される。
バランスを崩す。
右手は上げられない。
ハンドガンを弾かれる。
ショートソードを構える。
視界からゼロノスが消えている。
下からの嫌な感じ。
上方向に銀色の光が上る。
胸への衝撃。
痛み。
痛い・・・。
俺が戻ってくる。
何だろう・・・。
心の痛みが少し残っている。
体の冷たい感覚が消え、空気の冷たい感覚が伝わってくる。
宙を飛ぶデンオウベルト。
変身・・・解けたんだ・・・。
急に気持ち悪い感覚に囚われる!!
起き上がり走り出す!!
ヤクモがまだ・・・!!
純粋に破壊だけを求める心!!
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺が叫ぶ!!
ヤクモの意識を振りきって俺が叫んでいる!!
ズゥゥゥゥゥン・・・・・・!!
地面が衝撃を受けている!
ゼロノスが地を蹴り、俺の目の前に立ちはだかる!
トウカが俺とゼロノスの前に現れる・・・。
『邪魔をするな!!
岬なら大丈夫だ!!』
ゼロノスの動きが止まる!!
ゼロノスの横を駆け抜け、イマジンに向かう!
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ジャンプ!!
回転!!
右手への衝撃!!
イマジンの体を構成している砂が人の体を構成していく・・・。
俺は振り向いてゼロノスに向けて言葉を放つ。
「大事なカードを使わせてしまってすまない・・・。」
ゼロノスはベルトを外し、変身を解除する。
「俺は構わない・・・。
侑斗も、今は怒っている風だが、この事をきっと許してくれる・・・。」
「じゃぁ・・・侑斗に言っておいてくれ。
俺はぬるいのかもしれない。
でも俺は俺のやり方でしか電王をやれない。
俺は侑斗や良太郎のやり方では出来ないって・・・。」
「良太郎・・・?」
そうだ・・・俺は野上良太郎の別の可能性に気付くためにこの世界に呼ばれたのだ・・・。
・・・そう言えば今回はキメ台詞言ってねぇ!
なんて事を、どこまでも青い空の下、思っていた。
 

目覚めると・・・なんていう時はいつもここ、デンライナーなんだよなぁ・・・。
全身が痛む・・・。
絶対的な気のせいであるにもかかわらず、その痛みを拭うこともできない・・・。
俺の体にまだあの感覚が残っている。
黒く染まった記憶が。
『苦しいのは分かるが、もう終わったことだろう?』
声の主は角の生えた女の子である。
「トウカ・・・。
俺、あの瞬間は仮面ライダーになってなかった・・・。
ある意味で、あのベルデと同じ存在になっていたのかもしれない・・・。」
トウカ達にも迷惑をかけた・・・。
「トウカ、ごめん・・・。」
『アタイはそんな言葉のために頑張ったんじゃねぇよ。
他に何かあるだろう?
ほらもう・・・なんて言うか・・・』
俺は嫌な事を頭から追い出し、満面の笑みを浮かべて言う。
「トウカ、ありがとう。」
 
 
 
 
 
 
 
もしかしたら俺は・・・夢に届かないのかもしれない。それでも・・・
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現実でもいつも通りというのは無理だった。
死の恐怖というのはどうもうまく拭うのが難しいらしい。
目を覚ましたくない・・・。
だが意識は完全に覚醒している。
実に残念なことに、だ。
『起きろ、岬!
目が覚めていることぐらい知ってるんだぜ!!』
トウカの声が俺を無理やりにでも現実に引きずり上げる。
俺の中に怒りの感情をガツンとぶつけてくる。
びっくりして俺は目を開けて勢いよく体を起こす。
目の前には影が出来るほど近いトウカの顔がある。
冗談で済ますならキスでもするんだが、そんな感じでもない。
今にも首筋に喰らいつきそうな形相で睨んでくる。
「・・・俺は・・・どうなったんだ・・・?」
恐怖を押さえこみながらトウカに聞く。
『お前は負けた。
自分独りで突っ走りやがって!!』
そうか・・・。
ハナさんが向かいの席に座り、話し始める。
「私たちが助けに行った時には岬しかいなかったの・・・。
あのイマジン・・・仮面ライダーは岬を殺そうとしていたんでしょう?
何で殺さなかったのかしら・・・?
・・・今はそんなことは別にいいわね。
岬が生きているんだもの・・・。」
トウカは舌打ちをして、俺から離れる。
そして、他の席に置いてあった氷の入った袋を頭に当てる。
「トウカ・・・どうしたんだ?」
恐る恐るトウカに聞く。
『テメェのせいだ・・・。』
トウカは静かに俺を睨む。
『テメェがアタイを追いだしたんだ・・・!!』
追い・・・出した?
何が何だか?
『君の中の闇に当てられたんだよ・・・。
なにせ、僕たちまで気持悪くなったぐらいだからね。
あそこまで耐えたトウカちゃんは称賛に値するよ。』
マイがそう言う。
「そうか・・・。」
現実を見たくない・・・。
その思いが視線を下げる。
『ごめんなさいは・・・?』
トウカが俺に言う。
『ごめんなさいは!?』
トウカの声が響く。
俺は立ち上がり、拳を握りしめる。
「ごめん・・・トウカ・・・みんな・・・ごめんなさい・・・!!」
涙が頬を伝う。
俺には力が足りない・・・。
それが悲しかった。
トウカ達に言葉の刃を向けた・・・。
その刃は今、俺自身の心に突き刺さっている。
「ごめん・・・。」
痛みが全身に広がっていく。
心の痛みか、それとも戦いによるものか・・・。
今はどうでもいい。
俺の中に苦しみがあることが罪悪感を沈めてくれる。
それだけでいい・・・。
悪いことだと分かっていてもそれでも今は・・・。
『トウカちゃんじゃ駄目だった。』
マイが悲しい現実を口にする。
『何だと!!
次に奴に会った時には!!』
トウカがマイの胸倉をつかむ。
『次・・・本当に勝てるのかい?
また姿を消されて倒されるんじゃないのかい?』
『くっ・・・!!』
トウカはマイから離れる。
『今、対抗できるのはおそらく・・・。』
マイは俺の方を見る。
「ブチギレた俺・・・。」
マイが首をゆっくりと下に動かす。
『しかも、感覚だけでは駄目だ。
僕たちイマジンの力がないと対抗できない。』
「でも、トウカ達は長時間岬の体に入っていられない・・・。」
ハナさんの顔が曇る・・・。
『僕がやる・・・!!』
端の席で丸まっていたヤクモがそう言う。
『あのイマジンは・・・多分、僕のお姉ちゃんを・・・!!』
怒りに歪んだその顔は初めて出会った時よりも恐怖を感じる。
「・・・分かった」
『岬!!』
トウカが俺の言葉に驚く。
『何でこのガキに任せるんだよ!
アタイでも岬の中に10分もいられなかったんだ!!
このガキじゃ全然・・・』
『いいや・・・。』
トウカの言葉をマイが遮る。
『今のヤクモなら大丈夫かもしれない・・・。』
『何でだよ!?』
『岬がキレた時、トウカの意識だと反発したんだ。
ヤクモも、僕も、岬の意識を感じて震えが止まらなかった・・・。
だけど・・・、岬が敵に倒されそうになった時に、彼の震えが止まった。』
俺もトウカもマイの次の言葉を求め、じっとマイの瞳を見つめる。
「怒り・・・の力、でしょうねぇ・・・?」
だが、俺たちの求めた答えは別の人が応えた。
いつの間にか背中に気配が現れていた。
オーナーは俺とトウカの間を通り、端の席へと座る。
「ナオミくん、チャーハンを。」
「は~い!」
気が抜けて俺は椅子に座る。
「岬君の意識に反発したのは“いつもの”トウカくんでした。
しかし、強い闇に同調できる、あるいはそれより強い感情があれば耐えうる可能性があります・・・。
もっとも、それが岬君の求めるヒーローらしい戦い方になるかどうかは疑問が残りますが・・・。」
怒りに任せての戦闘はきっと惨いものになる。
攻めだけで守りが無い。
攻撃力はあっても慈悲は無い。
「今日は俺の体が持たないだろうし、奴との戦いは明日になるだろうな・・・。」
俺の言葉に合わせるように、ゆっくりとデンライナーの速度が落ちる。
「トウカ、俺たちに何かあった時は頼む。」
トウカに背を向けて立つ。
まるで、自分達の立ち位置が仲間ではなく敵同士かのように・・・。
『あぁ・・・。
いざとなったらテメェをブン殴ってでもな・・・。』
その言葉は、俺たちの場所を分けてしまった。
「明日・・・か。」
 
昨日と同じ場所、同じ時刻。
敵は鏡の中にいる。
「変身・・・。」
銀色のレール。
俺の中にヤクモの力が流れ込んでくる。
俺は、トウカ達を信じて、心を黒く染める。
悲しみすら邪魔だ。
今は壊すことが全てだ・・・。
黒く・・・黒く・・・。
世界が冷たくなってくる。
感覚が広がっていく・・・。
ヒュゥン・・・・・・
鏡の中から鞭が伸びる。
その鞭を左手で掴み、宙へ。
鞭に引っ張られて敵が現れる。
イマジン。
「その姿で戦うというのか!?
ナメんじゃねぇ、この野郎!!」
銃撃。
銃口から出た光はイマジンに当たらない。
敵を誘っている。
イマジンは鞭を離し、デッキを取り出す。
『変身』
地に足を着ける。
目の前に緑のライダーがいる。
空気がビリビリと震えている。
超える・・・今度こそ・・・“僕”は!!
デンガッシャーを組み替える。
左手にショートソード、右手にハンドガンを持つ。
目を瞑る。
攻撃が来る。
音で弾けるのが分かる。
目を開ける。
背中にダメージを喰らう。
だがそれはイメージでしかない。
足の裏に衝撃。
宙に浮くベルデ。
そこで初めてベルデの攻撃を上半身を倒して避け、その勢いでベルデを蹴りあげたのだと分かる。
体勢を立て直しショートソードで斬りつける。
“アドベント”
左腕にモンスターの舌が巻きつく。
地面に叩きつけられる。
“クリアベント“
意識を広げる。
“ソードベント”
ガキィィィィィィィ・・・・・・
剣撃をショートソードで受ける。
衝撃を右腕に受け、それがモンスターの居場所を知らせる。
見えない剣を受けつ、右腕を振る。
ガン・・・ガン・・・ガン・・・バシュゥゥゥ!!
焦げる臭い。
真っ黒な心が何かを叫んでいる。
ベルデも何か言っているようだが俺には聞く余裕がない。
否、内容を理解するような気持ちにすらなれない。
俺は攻撃を受け止め、敵を倒すだけだ。
『・・・・・・・・・!!』
ベルデの一言に反応する。
体を反転させ、銃口をベルデに向ける。
自分に隙が生まれたのが分かった。
“ファイナルベント”
その音に反応する。
モンスターが姿を現し、その口からベルデの足に赤い線が延びる。
迫りくるベルデ。
再び体を反転させる。
ベルデに向けて左手を振りおろす。
モンスターの右肩から煙が出ている。
バシュゥゥゥ!!
正確にモンスターの肩を撃つ。
ベルデに掴まれる。
軌道が違う。
浮遊感。
ベルデと共に地面に落ちる。
衝撃。
ハンドガンをベルデの額に当てる。
破裂音。
砂。
衝撃。
実体を失うイマジン。
敵・・・。
殺す・・・殺す・・・コロス・・・コロス・・・殺すコロス殺すコロス殺すコロス殺す・・・・・・・・!!
振りおろす左手。
金属のぶつかる音。
銀色の刃。
その先に金色の顔。
「最初に言っておく!!
俺はこれまでの電王のやり方が好きだった!!」
男の声。
「侑斗も口では言わないが心ではそう思っている!」
目の前にいるのはゼロノス。
「何でこんな事をするんだ!!
イマジンを救うつもりじゃなかったのか!?
やはりイマジンを全て殺すつもりか!?」
「――――――!!」
目の前の存在に対する否定の言葉。
言葉の理解すら自分で出来ない。
銃を突きつける。
重い感覚。
トウカの感覚。
「黒いの!
コイツを倒せ!!
ただし、殺すな!!」
トウカが消える。
「分かった!!」
右手が一瞬重くなる。
ショートソードが押し返される。
バランスを崩す。
右手は上げられない。
ハンドガンを弾かれる。
ショートソードを構える。
視界からゼロノスが消えている。
下からの嫌な感じ。
上方向に銀色の光が上る。
胸への衝撃。
痛み。
痛い・・・。
俺が戻ってくる。
何だろう・・・。
心の痛みが少し残っている。
体の冷たい感覚が消え、空気の冷たい感覚が伝わってくる。
宙を飛ぶデンオウベルト。
変身・・・解けたんだ・・・。
急に気持ち悪い感覚に囚われる!!
起き上がり走り出す!!
ヤクモがまだ・・・!!
純粋に破壊だけを求める心!!
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺が叫ぶ!!
ヤクモの意識を振りきって俺が叫んでいる!!
ズゥゥゥゥゥン・・・・・・!!
地面が衝撃を受けている!
ゼロノスが地を蹴り、俺の目の前に立ちはだかる!
トウカが俺とゼロノスの前に現れる・・・。
『邪魔をするな!!
岬なら大丈夫だ!!』
ゼロノスの動きが止まる!!
ゼロノスの横を駆け抜け、イマジンに向かう!
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ジャンプ!!
回転!!
右手への衝撃!!
イマジンの体を構成している砂が人の体を構成していく・・・。
俺は振り向いてゼロノスに向けて言葉を放つ。
「大事なカードを使わせてしまってすまない・・・。」
ゼロノスはベルトを外し、変身を解除する。
「俺は構わない・・・。
侑斗も、今は怒っている風だが、この事をきっと許してくれる・・・。」
「じゃぁ・・・侑斗に言っておいてくれ。
俺はぬるいのかもしれない。
でも俺は俺のやり方でしか電王をやれない。
俺は侑斗や良太郎のやり方では出来ないって・・・。」
「良太郎・・・?」
そうだ・・・俺は野上良太郎の別の可能性に気付くためにこの世界に呼ばれたのだ・・・。
・・・そう言えば今回はキメ台詞言ってねぇ!
なんて事を、どこまでも青い空の下、思っていた。
 

目覚めると・・・なんていう時はいつもここ、デンライナーなんだよなぁ・・・。
全身が痛む・・・。
絶対的な気のせいであるにもかかわらず、その痛みを拭うこともできない・・・。
俺の体にまだあの感覚が残っている。
黒く染まった記憶が。
『苦しいのは分かるが、もう終わったことだろう?』
声の主は角の生えた女の子である。
「トウカ・・・。
俺、あの瞬間は仮面ライダーになってなかった・・・。
ある意味で、あのベルデと同じ存在になっていたのかもしれない・・・。」
トウカ達にも迷惑をかけた・・・。
「トウカ、ごめん・・・。」
『アタイはそんな言葉のために頑張ったんじゃねぇよ。
他に何かあるだろう?
ほらもう・・・なんて言うか・・・』
俺は嫌な事を頭から追い出し、満面の笑みを浮かべて言う。
「トウカ、ありがとう。」
 
 
 
 
 
 
 
もしかしたら俺は・・・夢に届かないのかもしれない。それでも・・・
何十分も探したのだが未だに見つからない。
どういうことだ?
『何で見つからないんだ?』
「イマジンが見つからないとどうしようもないんだが・・・。」
公園などの開けた場所なら、イマジンが襲ってくると思ったのだが・・・。
今は公園を抜け、近くのビル街を歩いている。
人通りは少ないので、もし襲ってきても被害は少ないはずだ。
「仕方ない、ちょっと休憩しよう」
そう言って、ビルを覆うガラスに背を預ける。
『やっと見つけた・・・。』
声が聞こえた。
背中に冷たいものが通り過ぎる。
それと同時にトウカが入ってきて、攻撃を回避する。
次の瞬間、俺の居た場所のガラスから、腕が生えていた。
『何だ、ありゃぁ!?』
トウカは知らないが、俺はあれを知っている。
「ベルデ・・・!!」
仮面ライダーでありながら、欲望のままに戦う者。
否、そこで使うべき仮面ライダーとは、ヒーローでなく、欲望のために戦う者。
そして、この世界ではありえない存在。
少なくともこの時代では・・・・。
『久しぶりだなぁ・・・電王!!』
聞き覚えのある声・・・。
これは・・・!
ゆっくりと緑色の仮面ライダーが出てくる。
俺の知っている姿。
それはこれまでのイマジンに対しては抱かなかった恐怖。
「テメェ、何者だ!!」
『この姿にしたのはお前だろう?
まぁ、ここ最近もイマジンをぶちのめしていたらしいからなぁ・・・。
忘れても仕方ないか・・・クククッ・・・』
ライダーは不気味に笑いながらベルトのバックル部からカードデッキを抜き取る。
ガラスが割れるように仮面ライダーの姿が割れる。
その中から出てきたのは、あの時のイマジン・・・!
「何でここに居やがる、トカゲ野郎!!」
まさか・・・二番目のイマジンがどうしてここに!?
『貴様らに復讐をするためさ・・・。
半端に時間を変えてくれてありがとうなぁ・・・。
おかげで力を手に入れた・・・クククク・・・ハァァァァァッハッハッハッハッ・・・・・・!!』
あの時・・・、トウカを戻す事ができたと同時に、こいつを人間の姿にすることが出来なかったというのか!!
「アタイらを狙ったってことは、やっぱりブローチを狙ってんのか・・・!?」
『いいや、貴様らを誘い出すために人間を襲っていたのだ。
契約などその後からで十分だ!!』
俺の指がポケットへと向かう。
「よほど自信があるようだな・・・。」
俺の手が尻ポケットに入ったライダーパスに触れる。
『変身!!』
二つの声が重なる。
俺の体に銀色のレールが敷かれ、不思議な力が入ってくる。
目の前ではカメレオンのイマジンの特徴が、舌のような突起から頭の大きな目に代わる。
俺とカメレオンのイマジン。
電王とベルデ。
仮面ライダーと仮面ライダー。
空気が変わる。
イマジンよりはるかに強い敵・・・。
俺の感情が体を震わせる・・・。
「しっかりしろ、岬!!」
トウカ・・・。
「仮面ライダー・・・なんだろ!
ライダーになるんだろ!?」
俺の震えを抑えるためにトウカが俺に言う!
『安心しろ・・・俺たちは、仮面ライダーだ!!』
そう言った瞬間、まるで真剣で物を斬るように、緊張で凍りついた場の空気を気合で切り裂けるような不思議な感覚がよぎる。
何だろう・・・不思議な感覚だ。
トウカならやれる・・・。
否、トウカと一緒なら絶対大丈夫だ!!
何だろう・・・まるで自分の中にもう一人の自分が居るような感覚。
半分は俺の意識、もう半分はトウカの意識で体が動いているように感じる。
否、トウカが体を動かしているんじゃない!
トウカと共に俺が体を動かしているんだ!!
「俺たちのサウンドは!」
「クライマックスだ!」
気合の入りようが違う。
行ける!
それ以外の感情が浮かび上がることはなかった。
力が重い。
その感覚が地を蹴る本当の力になる!
気合だけで空でも飛べるんじゃないかと思う。
その感覚にとらわれないためにも、目の前の敵を倒すことが大事なのだ!
「行くぜ行くぜ行くぜ!!
せいりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
足が重い!
地面に吸いつく感じだ!
いつもより地面を蹴りやすい!
デンガッシャーを組む!
一番と三番、二番と四番。
ショートソードとハンドガン!
ベルデが鞭を唸らせる!
俺はショートソードで弾こうとした。
しかし・・・。
パァァァン・・・・・!!
弾こうとした鞭の先が目の前から消えた!
否、“爆ぜた”のだ。
自分の力に震える・・・!!
左手の銃をベルデに向ける!
ガツリ・・・
ベルデは飛び上がり姿を消す。
目を閉じて音や空気を感じるってのが定石だろうが、俺にはそんなスキルはない。
音と地を蹴る時の衝撃を目で追う。
だが、力ばかり入ってきても俺の能力自体は同じままだ。
むしろ単純な力が俺の感覚を阻害している。
バシィ・・・ビシィ・・・!!
見えない鞭が俺の体を打つ!!
「ダメだ・・・。
目が追いつかねぇ・・・!!」
力だけでは対処できない・・・。
ベルデが近づく感覚を感じ取った時にはもう遅い・・・。
気付いた時には強い痛みが腹に満ちていた。
足先だけでなく、体全体が重くなり、膝を付く。
それは、心にまで響く痛みだった。
すぐさまベルデは離れ、位置が特定できなくなる。
「チッ・・・アタイ達には見つけられねぇって事か!?」
調子に乗って声でも出してくれたら場所が分かるのに・・・。
そんなに感情的になっては・・・。
感情・・・?
立ち上がり、深く息を吐く。
心の中を空っぽにする。
力がそこに流れ込んでくる。
無駄な力が体から消え、感覚が鋭くなっていく。
空気が壊れるのを感じる・・・。
ヒュン・・・バシィ!!
襲ってきた鞭をハンドガンではじく。
『くっ・・・!!』
声がした方に銃口を向ける。
だがもう気配はない。
それでも目は見えない何かを追っている。
シュィン・・・パァン・・・
次の音を撃ち落とす。
ベルデが体を現す。
『くぅぅ・・・!!』
ベルデが腹を押さえる。
だが、その手にあるのは・・・!!
「アドベントカード!!」
右手のカードが腰のバイザーに飛ぶ。
“アドベント”
まさか・・・そんな!!
ビルのガラスが波打ち、モンスターが現れる。
目の前に現れたのはミラーモンスター・・・。
「何なんだ、ありゃぁ!?」
モンスターを近づけないために銃口をモンスターに向ける。
そしてショートソードをベルデに向ける。
もうベルデは透明になれない!
俺はそう確信していた・・・。
緑色のミラーモンスターに狙いを定め、トリガーを引く。
何度も何度も何度も何度も・・・。
『ギシャァァァァァァァァァァァァァァァ・・・!!』
モンスターは叫びを上げる。
俺は黒く染まる自分を感じる。
別の方向から来た力を薙ぎ払う。
ヒュン・・・・・・
ベルデがカードを取り出す。
“ク”
自分の表情すら分からない。
“リ”
「―――――――――!!」
“ア”
トウカが何かを伝えようと叫んでいる。
だがそれも鬱陶しい。
“ベント”
意識をさらに沈める。
音声の内容に反応したのではない。
音に反応した自分に、いつもなら何かの感情が起きたのかもしれない。
カァァン・・・カァァン・・・カァァン・・・
音しかない。
何を見ているのか分からない・・・。
体が勝手に動く。
感覚が途切れた。
 
何分たったのだろうか?
あるいは何秒だったのかもしれないし、何時間という風にも感じた。
“ファイナルベント”
その音に意識が闇から恐怖へと変わる。
目の前には装甲が酷く傷ついた緑のライダーが逆さ吊りになっていた。
だんだんと近づいてくるベルデ!
次の瞬間、俺は宙を飛んでいた!
左手が動き、ハンドガンでベルデを撃つ!
俺は背中から地面に落ちる。
ごろごろと転がり、仰向けの状態になる。
俺の目に映るのはきれいな青空。
カツカツカツカツ・・・・・・
足音が俺の方に近づいてくる。
青色だけだった視界に黒い影が入ってくる。
俺の体にはもうトウカの力はなくなっている。
少しでも最後を楽にしようと、意識を再び体の奥深くに沈める。
『さぁ、無様に命乞いをしろ。
その声すら潰してやるからよぉ・・・!
アァァァァァァァァァァァッッッッッッハァッハァッハァッ・・・!!』
不気味な笑いが響き、恐怖に俺は目を瞑る。
だが、いつまで経っても地獄へ堕ちるほどの痛みはやってこなかった。
『ちぃぃ・・・時間切れか・・・!!』
目をそっと開けるとベルデはそこにいなかった。
周りを見渡すと近くのビルのガラスに波紋が出来ていた。
急に全身の力が抜け、俺の現実へと沈んで行った。
「落し物?」
「そうなの。」
夕食を終えた俺に、愛理さんはブローチを見せてきた。
髑髏の形のブローチなんて、ライブラリーに合わないかなぁって思って・・・。
だから落とし主を探してますって堂々と言えなくて・・・。」
確かに、ドクロというのはここに似合わないなぁ。
でもドクロモチーフのブローチなんて珍しい。
ドクロ三つが重なってハートマークを形作っている。
「俺の方で探してみるよ。
こんな珍しいのは高いかも知れないから。」
「じゃぁ、おねがいね、岬ちゃん。」
「うん。」
岬ちゃん・・・か。
愛理さんも俺になじんできているんだな・・・。
良子ちゃんが目覚める時のために、愛理さんの中の良子ちゃんを薄れさせないようにしなくては・・・。
「そうだ・・・今、怪物がブローチを探しているって尾崎さんが言っていたから気をつけてね・・・。」
もしかして・・・。
「うん・・・分かったよ。」
意外なところでカエル釣りの餌が手に入るとは・・・。
「俺はもう寝るよ。」
「うん、おやすみ。」
俺は愛理さんからブローチを受け取ると、自分の部屋へと向かう。
『疑似餌の方がいいかもね・・・。』
マイの声が聞こえてきた。
「ダミーってことか?」
階段を上がり自分の部屋のドアを開ける。
『そうだよ・・・。
僕が思うに、何度もカエルが僕たちを狙ってくるようにしないと、もし最初の釣りで逃げられてしまってはしょうがないからね・・・。』
部屋の中でベットに腰掛ける。
それと同時に、向かいにあるトレーにマイの姿が現れる。
「確かにな・・・。
本編でも二回に分けて戦闘してたし・・・。」
『何の事?』
「いや、なんでもないよ。」
俺は今日の疲れから上体をベットに預ける。
『それにしても、このトレーっていうのは嫌なものだね・・・。
何だか隔離されてる感じがして心地悪いよ・・・。』
「仕方ないだろ?
イマジンは砂を落とすんだから・・・。
もっとスマートな方法があれば良いんだけどな・・・。」
『僕たちが憑依するっていうのは?』
「却下だ!
お前は俺を寝かさないつもりか!」
『エロい事はしないよ。』
「岬ちゃ~ん!
誰かと話してるの?」
一階から愛理さんの声が聞こえてくる。
「ごめん、すぐ寝るよ!」
俺はマイの方に向き直る。
「詳しいことは明日にしよう。」
『分かった。
じゃぁ、また明日。』
俺は俺の現実へと向かう。
 

翌日、ブローチを作るためのいろいろな道具を買い集めて制作することにした。
食堂車の中では紙粘土とコップが用意されている。
「粘土だけで大丈夫か?」
『任せてよ。
僕の技術を侮らないでよ?』
「俺はそんなことは気にしてないよ。
それよりも・・・本当にこのブローチがイマジンの狙いなのかが気になるところだ・・・。
『確かに。
三日前からミルクディッパーにあったのだとしても、可能性が高いというだけの話。』
「俺たちは俺たちのやり方で探す。
行くぞ、トウカ。」
『よっしゃぁ!
さっさと見つけ出して倒してやるぜ!』
ウィン・・・
食堂車のドアが空き、ヤクモが入ってくる。
『お姉ちゃん、これ使って!』
ヤクモの手にはハートの厚紙が乗っている。
クレヨンで描かれた俺とマイとヤクモだ。
『何だそれ?』
トウカが覗き込んでくる。
『ブローチの代わり!
僕とお姉ちゃんとマイだよ?』
『何でアタイがないんだ!?』
「トウカ、落ち着けって。
三つの髑髏をモチーフにしてあるんだから枠は三人。
場合によっては俺も違ったかもしれないんだ。」
トウカを元気づけてやろうとそんなことを言う。
『僕ならトウカちゃんのその胸を美しく描くよ!』
マイがトウカの後ろから現れた!
さっきまで紙粘土の袋をにぎにぎしていた手がトウカの胸へと回される。
『にぎゃぁぁぁぁぁぁ!!
やぁぁぁめぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
俺の手が不規則に見えるであろう軌道を描いてマイの額にたどり着く。
ズビシィ!!
「止めぃ!!」
しぶしぶ、という感じでマイが手を下げる。
それと同時に車内アナウンスが流れる。
ゆっくりとデンライナーの速度が落ちてくる。
「そろそろだな、トウカ!」
『おうっ!!』
トウカが俺の体を通り抜ける。
「よし、気合入った!
マイ、ブローチを頼む!」
『分かってる。』
俺はトウカと共にデンライナーを降り、時の狭間と現実世界をつなぐドアに手をかけた。
まさかのハード判定。
チートでタイムボーナス出したら別ルートに入ってしまった・・・。
「これはこれで仕方ないかなぁ・・・。
あはははは・・・。」
深いため息。
食堂車の中にはため息で逃げた幸せであふれている。
これ以上不幸になるわけにはいかないのだが・・・。
一度逃げた幸せの捕まえ方なんて分からない。
『これでもう三日目・・・。
僕はもう疲れたよ。
相手は不細工なカエルなんでしょう?
女の子を追いかけるよりも気が乗らないし疲れるし・・・。』
確かに大変なのは分かるが・・・。
『とにかくやってみるだけだ!
アタイは早くヤツと戦いたいぜ!』
こいつはいつもお気楽だな・・・。
「ちょっとばかし“行って”くる。
着いたら起こしてくれ。」
『分かったよ、お姉ちゃん!』
 
俺の体には無数の傷がある。
悲しみの記憶。
嫌な事ばかり思い出す。
紅い筋。
思い出したくない。
・・・そんな事ももう不確かな記憶でしかない。
体にあるのはその痕でしかない。
『お姉ちゃん、しっかりして!
お姉ちゃん!!』
体が・・・動かない・・・。
ひどい痛みがあるはずなんだ・・・。
これは・・・痛みの・・・。
否、これは心の痛みだ。
『お姉ちゃん、目を開けてよ!
お姉ちゃん!!』
俺にすがり寄ってくるのは大事な家族・・・。
「―――――――・・・。」
彼の名を呼ぶ・・・。
意識が無へと沈んで・・・。
瞼が閉じられているのを認識する。
目を開けて立ち上がろうとするが、体が重さに耐えきれず、椅子に押し付けられた。
『お姉ちゃん・・・。』
膝の上ではヤクモが眠っている。
イマジンと契約者はつながっているが・・・さっきの夢はその影響か?
席の向かいから手が伸びる。
「トウカ・・・。」
トウカがヤクモの頭をなでる。
『アタイはこっち来れて良かったと思ってるけど、こいつも、あのハナクソ女も、理由があって来たんだよな・・・。
好きでこっちに来たわけじゃねぇ。
アタイも・・・なんて言うべきか良く分かんねぇけど、自分の場所じゃねぇって感じはスゲェ嫌だって知ってる。
だから・・・、そんなこと忘れるぐらいにアタイ達が笑わせてやれたら良いのにな・・・。』
「あぁ・・・。」
トウカはどこか遠くの記憶を眺めているようだった。
「俺は、ただ命を救えばと思っていたけど・・・それだけじゃぁ・・・。」
『それ以上の事は言うな。
綺麗ごとだけじゃないんだ・・・この世界ってやつは。
岬・・・もし誰かが間違ってるって言っても、アタイは岬を信じてる。
だから・・・岬を信じてるアタイが間違っていないことを見せてくれ。』
俺は頷く。
窓の外を見ようにも、窓は鏡と化していた。
時の狭間の世界にも夜が来ると知ったのはつい最近の事だ。
ドラマの中にはそんなシーンがほとんど無かったから忘れてた。
『それにしても、欠けた月ってのを実際に見ると、変な感じだな・・・。』
歪な形の月が出ているのだが、窓ガラスが自身を鏡と勘違いしているうちは良く見えない・・・。
『うぅぅぅ・・・イソフラボ~~ン・・・むにゃむにゃ』
ヤクモがもぞもぞと動く。
何だ、イソフラボンって!?
大豆にでも追いかけられる夢を見ているのか!?
『卵が~~・・・むにゃ?』
ヤクモが目を覚ます・・・。
『あれ・・・?
お姉ちゃんは・・・?
そうだ・・・お姉ちゃんを助けないと!!』
ヤクモはどこかへ、否、姉の元へと行こうとする。
俺の膝の上で暴れるヤクモを俺は押さえつける。
「落ち着けヤクモ!
お前の姉ちゃんは俺が助けてやる!」
ヤクモは自分の状況に気付いておとなしくなる。
『・・・ったく。
夜風でも当たって目を覚ませって・・・。』
トウカが窓を開ける。
月の光が・・・嫌な感じがする。
紅い光。
どこかで見たような模様が・・・。
「あれは・・・確か・・・ライダーの・・・。」
「あれは幻の月です。」
オーナーがそういう。
「幻想の世界で生まれ、幻想の世界で壊された月がここにあるのです。
そして、その幻に刻まれたあの紋様は、かつての黒き巨人が残したものだと言われています。
鋼鉄の蝙蝠を従えし、黒き巨人が・・・。」
それって、もしかして・・・。
「デンライナーは間もなく停車しま~す!」
ナオミちゃんのアナウンスが流れる。
俺は悪しき戦士の姿を思い出すのを止め、降りるために立ち上がる。
プロフィール

VAZNAGE

Author:VAZNAGE
ここまで長生きしちゃうと何だかもう、死の運命云々は逃れられたようですね(;^ω^)ちなみにVAZNAGEと書いて「ばつなぎ」と読んで欲しかったりします。ニコ動にて仮面ライダーの漫画を投稿・・・出来たら良いなぁ

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