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4th 命の一部が機械に置き換わった少女

暗闇の中に一人の少女が居た。
あるいは誰も居ないのと同じかもしれない。
彼女が苦しんでいることは、彼女以外には分からない。
眠っているようにしか見えないのだから。
彼女の名を知る者はそこには居ない。
広大な建物で唯一、動くことのない場所。
真っ暗な闇の中で彼女は眠っている。


数年前、彼女は普通に人生を謳歌する女学生だった。
その日、ただただ近道をしただけで、胸を抉られた。
見たいテレビ番組があるからと、人気のない林道に入った。
そのバケモノは人のシルエットをした、獣だった。
異様に伸びたその爪は、爪というにはあまりにも美しく、そして、見た者全てに恐怖を植えつけるような禍々しさがあった。
爪に見蕩れたという表現も、あるいは恐怖したという表現も、その時の彼女には当てはまらないかもしれない。
いずれにせよ、彼女はそれを見た瞬間に走り出そうとは思えなかった。
その爪は彼女の右胸を刺し貫いた。
熱が伝う。
痛みで胸以外の感覚が吹き飛ぶ。
痛みから叫ぼうと口を大きく開ける。
声の代わりに液体が喉を伝う。
痛みで理解できる筈もないが、彼女が吐き出したのは大量の血。
それが鼻からも出ていこうとする。
一瞬だけ『窒息する』という、なんとも的はずれな、ある意味では的を射た思考が彼女の頭を過ぎる。
バケモノは痛みのあまりに藻掻く事すら出来ない彼女に、確実な死を与えようと腕に力を込める。
横一閃。
彼女は自分の左腕が飛ぶところを見た。
胸に刺さっていた爪が無くなり、倒れていく。
それすら認識できない。
青。
それを認識することはできた。
しかし、それが空だということを認識できるほど、彼女は人間として機能していなかった。
視界がぼやけていく。
人が見えた。
右腕を上げているのが分かった。
黒い影が何人も彼女を取り囲む。
意識が途絶える。



その後、彼女が見たのは赤い光だった。
それが何かという疑問を持つ時間もなく、彼女はすぐに意識を失う。
真っ赤な光が彼女を照らしている。
白い服装の者たち。
彼女の胸に在った物を取り出し、代わりに鈍く光る鉄の塊を詰め込む。
白い影はそれだけすると、彼女を針だらけの壁に叩きつけた。
その針は彼女の背中の肉を貫く。
そして、背中の肉を挟んで胸に埋め込まれた機械と接続された。
命として彼女が輝くには、あまりにも大きな痛みが伴う。
そんなことは白い影には関係が無い。
白い影に命令を与えた男も、気まぐれで彼女の脳細胞が死滅するのを先送りにしたに過ぎない。
しかしながらその男は背中からあふれるその血から目を背けた。
これから世界を渡り歩き、破壊を散蒔くつもりのその男は、命の重さを、生きるという事の重みを、死という現象を、死に逆らうということを、普通の人間では決して見ることが出来ない方法で見たのだ。
一瞬、自分の行なった事が間違いではないかという疑念すら湧く。
それを知るには、彼は若すぎた。
男は気持ちの悪さを抑えながら、白い影に指示を与え、部屋を出ていく。
廊下ですれ違う部下たちはいつも通りの敬礼をするだけで、彼の存在を心配などしていない。
この程度で潰れては困るのだ。
彼は、人類史上最も強大な悪のトップに立つべき男なのだから・・・。



赤い光で目が覚める。
複数の白い影。
怪物を見た直後に現れた茶髪の男もいる。
私は・・・


彼女の命は目を覚まそうと必死になっていた。
しかし、いつまで経っても目を覚ます事が出来ない。
時折、意識が現実まで浮上し、薄目を開けることまでは出来る。
だが、そこまでだ。
生きてはいる。
だが、動けない。
体は背中から突き刺された何本もの管をすでに受け入れ、痛みなど感じないはずである。
血流にも栄養にも問題は無い。
脳の損傷も無い。
だが、彼女は10秒以上現実に意識を向けられない。
すぐに意識は暗闇へと落ちる。
茶髪の男は彼女のことを助けたかった。
毎日の実験にもできる限り立ち会い、実験の無い日も、ほんの数分だが彼女の事を見ていた。
だが、一年が過ぎた頃、彼らは彼女を見捨てた。
栄養とエネルギーを与えるだけ。
それだけになった。
彼女は目を覚まそうと眠っていようと常に闇の中だ。
常に孤独だ。
常に、感じないという冷たさを心に刻んでいくのだ。



彼女ははっきりと目を覚ました。
赤い光。
それは数百日ぶりに見る現実の光。
自分の向かいには薄茶色のコートと、同じ色のフェルト帽をかぶったメガネの男がいた。
「君も、彼によって痛みを受けたんだね。
かわいそうに・・・。」
彼女はその言葉に、ほんの少し恐怖を感じだ。
「私には君を目覚めさせることしか出来ない。
すまない・・・。」
彼女は周りの状況を見渡す。
身動きができない。
彼女は状況がつかみきれず、コートの男に質問しようとした。
その時、コートの男の姿は陽炎の様に歪み、薄くなっていった。
「出来れば、君が生きて開放されることを願う。
さようなら、フォース。」
フォース。
それだけは彼女の耳に残っていた。



数時間。
あるいは数十時間だろうか?
あるいは数日かもしれない。
彼女にとってはかなりの時間がたった。
背中や胸に違和感があったものの、とてつもなく長い時間寝ていたのだ。
思考が出来るだけでありがたかった。
状況を変えるための何かが出来るかもしれないのだ。
結局今まで何も思いつかなかった訳だが。
声を出すこともうまくいかない。
肺の代わりになっている機械を、自分の物にしきれていなかった。
喉も長い間使っていないので、慣らす必要があった。
少し変ではあったが、彼女は自分の声を作り上げていった。
それにも何時間もかかった。
ようやく慣れてきた頃、大声で助けを呼ぼうとした。
失敗した。
喉が吹き飛んだ、そんな気がした。
口に血の味が広がる。
あまりにも強い力で息を吐いたので喉が耐え切れなかった。
力みすぎて目を閉じていなかったら、両目とも飛び出していたかもしれない。
どうしようも無い、そう思った。
血の味が口からなくなって少した頃。
突如揺れが襲ってきた。
建物を揺さぶるそれが、建物を壊す驚異に変わった。
目の前に出来た小さな筋が一瞬で大きな割れ目に変わる。
彼女は闇に落ちていく。
深く・・・深く・・・
4th

彼女の物語の結末?
そんなものは彼女自身が決めることだ。
俺が彼女について語れるのはここまでだし、彼女の物語の続きを知りたいのなら彼女自身に聞けばいい。
アンタ、彼女に会いにいけるんだから。
なぁ、91号さん?












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Author:VAZNAGE
ここまで長生きしちゃうと何だかもう、死の運命云々は逃れられたようですね(;^ω^)ちなみにVAZNAGEと書いて「ばつなぎ」と読んで欲しかったりします。ニコ動にて仮面ライダーの漫画を投稿・・・出来たら良いなぁ

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